新鮮胚移植とビタミンDに関する論文

今回Pubmedから紹介する2021年の論文は「結論として採卵後に新鮮胚移植を受けた女性において、胚移植時の遊離型および総合ビタミンD濃度は胚移植の成功と関連しなかった」との内容のものです。詳しくは下記Pubmedのサイトで確認してください。

[Mar.2021]ビタミンDが胚の着床に及ぼす影響-新鮮胚移植における前向きコホート研究

2021 Mar;115(3):655-664,”Impact of vitamin D on human embryo implantation-a prospective cohort study in women undergoing fresh embryo transfer”,https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33039126/

予め誤解がないように述べておくと、この論文を取り上げた理由は何も妊活や胚移植にビタミンDが関係ないと言いたいわけではありません。むしろ他の多くの論文が示しているように必要なものだと考えています。(妊活とビタミンDに関しては、”不妊治療”と”ビタミンD”と検索すればかなり多くの情報が得られます。妊活と入力するより不妊症不妊治療とした方が医師のサイトにつながりやすく信用性の高い情報が得られると思います)

今回この論文を取り上げた理由は、これだけ妊活でビタミンDが大切だと言われていても、二千人を超える女性を対象にした研究でも「総合ビタミンD濃度と胚移植の成功との関連がない」との結論がでることがあるので、足りないものはサプリメントで補いつつも「なぜ自分の生活スタイルではビタミンDが不足してしまったのか?」を考えてみることもサプリメントを飲んで単に数値を整えることと同じくらいに意味があることではないかとの思いで取り上げました。

不妊治療では、採血で何か良くない数値があると改善のために薬やサプリで補う(もしくは下げる)方法が頻繁に取られます。この場合であればビタミンDが少なければサプリメントで補うといった感じです。複雑な問題をできるだけ単純化することは良いことですが、それでも人間の体は想像以上に複雑なわけですから今回の論文のようにビタミンDの数値だけをみることに意味がないとの結果が出る場合もあります。ビタミンDが低くても妊娠しているわけですから、妊活に関してはそれに変わる何かが存在してビタミンDの不足を補っている可能性も十分あります。結局のところビタミンDが低くなる生活を見直した方が良い結果に結びつくこともありえます。先天的なものや薬でしかコントロールできない場合は仕方ないですが、運動やそのために外に出たり、食事の習慣などを改善することで、数値の上ではサプリメントよりも改善が見られない場合であっても、それえ以外の効果で妊娠率が上がるかもしれません。

最後に「論文はその時点での結論のひとつであって絶対的な正解ではない」ということも付け加えておきます。これは下記の山中先生の言葉を参考にしてください。

私は、科学的な真実は、「神のみぞ知る」、と考えています。新型コロナウイルスだけでなく、科学一般について、真理(真実)に到達することはまずありません。私たち科学者は真理(真実)に迫ろうと生涯をかけて努力していますが、いくら頑張っても近づくことが精一杯です。真理(真実)と思ったことが、後で間違いであったことに気づくことを繰り返しています。

山中伸弥による新型コロナウイルス情報発信 科学情報の信頼度から

おまけで厚生労働省のサイトを参考にビタミンDを簡単におさらい

下記は厚生労働省関連サイトeJIMから抜粋

ビタミンD(別名カルシフェロール)は脂溶性ビタミンで、いくつかの食物に天然に含まれており、それ以外の食物に添加されたり、サプリメントとして入手できたりもする。また、体内において生合成も行われ、日光の紫外線(ultraviolete:UV)が皮膚に当たるとビタミンD合成が誘発される。

厚生労働省関連サイトeJIM:https://www.ejim.ncgg.go.jp/public/overseas/c03/10.html

で、ビタミンDを箇条書きするとこんな感じ。

  • 脂溶性ビタミンで全身の細胞内に存在
  • 紫外線が皮膚に当たるとビタミンD合成が誘発される
  • 腸内でのカルシウム吸収を促進
  • こむら返りや痙攣を予防
  • 炎症抑制、細胞増殖、神経筋機能、免疫機能、グルコース代謝などのプロセスの調節に関与

注意点として厚労省では『日光によるビタミンDの生成は大切だが、皮膚癌のリスクを上げないために皮膚の日光曝露は制限するのが賢明』としており『日光を避けている人、日焼け止めや衣服で身体を覆っている人は、食生活にビタミンDを多く含む食品を取り入れるか、サプリメントを摂るのが良い』としています。

皮膚がん:統計情報のまとめ(国立がん研究センター)

・診断される数(2019年) 25,247例(男性12,815例、女性12,432例)
・死亡数(2020年) 1,707人(男性875人、女性832人)
・5年相対生存率(2009~2011年) 94.6 %(男性94.4 %、女性94.6 %)

がん種別統計情報:皮膚

ということで個人的には、国立がん研究センターの「皮膚がん」を閲覧した感じ、リスクを考慮しても普通の人はサプリメントでビタミンDを補いつつも、十分に日焼け対策をした上である程度お日様に当たった方がそれ以外のメリットもあるように感じました。みなさんはどう感じましたでしょうか?