二人目不妊と鍼灸治療の有効性に関する論文

医学系論文サイトPub Medで鍼灸関連の情報を探していたら「二人目不妊の体外受精-凍結胚移植」に関してそれに該当する内容の論文がありましたので、我田引水的に今回取り上げてみました。まずは下記の原文をチェックしてみてください。
チェックするが面倒な方は更にその下に下訳程度の文を載せてみました。

Effect of acupuncture intervention at different time points on the pregnancy rate of frozen embryo transfer

PubMed.gov : Zhongguo Zhen Jiu. 2022 Sep 12;42(9):987-90. doi: 10.13703/j.0255-2930.20210625-0005.

以下、下訳+やや意訳です。誤りがあればご指摘してください。

(論文下訳)

凍結胚移植の妊娠率に及ぼすそれぞれの時点での鍼灸施術の影響について

目的(Objective)
体外受精-凍結胚移植(IVF-FET)の妊娠率に対する鍼灸治療の介入時期の違いによる効果の違いを観察すること。

方法(Methods)
二次性不妊症患者(二人目不妊)99例を、本人の希望により『①移植日のみ鍼群(以下①移植日のみ群)』『②移植周期5回+移植日に鍼灸群(以下②移植周期群)』『③非鍼群』に分け、各群33例ずつとした。3群とも通常のIVF-FETを実施。
①移植日のみ群は胚移植の1時間前と30分後に鍼治療。②移植周期群は胚移植の5週間前から(週1回を合計5回)と移植日に鍼治療。③非鍼群は施術を何もしない。3群における生化学的妊娠率および臨床的妊娠率を比較した。

結果(Results)
②移植周期群の生化学的妊娠率および臨床的妊娠率は③非鍼群より高かった(P<0.05)。②移植周期群と①移植日のみ群、①移植日のみ群と③非鍼群との間には、生化学的妊娠率、臨床的妊娠率に統計的差異は認められなかった(P>0.05)。

結論(Conclusion)
『②移植周期5回+移植日に鍼灸群』の鍼灸治療は、体外受精-FETを受ける二次性不妊患者(二人目不妊)の妊娠率を効果的に改善することができる。

上の通り、今回の論文は二人目不妊(patients with secondary infertility)が対象で、論文の結論としては「何も鍼をしない群と比較して移植予定日の5週間前から週1回鍼灸施術を受けて、更に当日も施術を受けると妊娠率が上がった」となっています。

ここからは論文を読んでの個人的な感想です。

結論を見ると妊娠率を上げるには5週間前からの施術が必要そうにみえますが、結果をみると、移植当日だけの施術と5週間前からの施術との有意差がなく、施術なしと移植当日だけも有意差がなかったことを考えると、移植直前の1回だけでは少なすぎたけれども、ひょっとしたら4週間前でも良かったかもしれないし、5週間前から3回の施術でも有意差がでたかもしれません。

なぜこのようなことを書くかというと、最近無理に週1回の治療を強要するようなウェブサイトや鍼灸院があるように感じていて、このような論文が出るとその動きが加速しそうで心配だからです。以前も書きましたが医学のエビデンスの取り扱いは最終的に「個別の患者への臨床における意思決定に役に立つ確率論的な情報」だと考えています。この論文は多くの情報のそのひとつにしか過ぎません。したがってこの論文を基に個々人の状況(年齢や胚の質、過去の移植数など)に合わせたアナウンスが必要だと思います。

あと論文では、移植日の鍼灸治療が「胚移植の1時間前と30分後に鍼灸治療を行った(received acupuncture treatment 1 h before and 30 min after the embryo transfer)」となっており、移植当日に一日2回も鍼をしているように読めるところです。ここは普通に考えてもハードルが高いし、本当に1日に2回も必要かは検討の余地がありますね。個人的にはそこまでは必要ないように思えますが…。

いずれにしても、週1回の施術を5週間+移植当日の鍼灸施術で妊娠率に結果に良い影響を与えられることを示したこの論文は、同じことを繰り返していてもなかなか結果が出ないにとって、鍼灸も選択肢の一つして検討してみるのも悪くないかもしれません。(これも以前に書きましたが「同じことを繰り返して、違う結果を期待するのは都合が良すぎる」との考え方があります)

今回は以上です。内容など気になることがあったら、ぜひ当院に遠慮なくご連絡ください😊

採卵胚移植に対する体質改善に関しては、経験上、なんらかの良い影響を与えようとすると特に四十代前後から年齢が上がるほど週一回の鍼灸施術が一番効果がある(=結果が出やすい)と感じるのも事実です。ただしこれにはかなり個人差もあり、10日に1回や、2週に1回でも(改善までに時間はかかるものの)効果が出ている人もいます。当院では患者さんの状況にあわせて施術プランを提案しています。