はりあん育ち盛りの小児期に、何らかの理由で大きなストレスが継続的に加わると、神経系の発達が阻害される場合があります。神経系の発達が阻害されるということは、発育において重大な影響を及ぼす可能性があり、自律神経であれば、たとえば迷走神経支配の胃や腸の機能に障害が生じることが考えられます。その結果として、吐き気や食欲不振などの症状があらわれることがあります。
小児鍼とは…
小児用の鍼は棒状の形をしており、痛みを感じることはなく、むしろくすぐったく感じるお子さんが多いです。それでも恐怖心を軽減するため、施術前に問診を行う場所でお母さんと一緒に鍼を実際に手に当てて痛くないことを確認してから施術ベッドに移り、お母さんが横にいる状態で施術を行います。実際の施術は心地よく感じられるようで、2回目はお子さんの方から「行きたい」と言って来院されるケースも多くあります。
| 属性 | 10代(小学生高学年) 男児 |
| 主訴 | 頻繁な腹痛。吐き気。場合によっては嘔吐。学校の給食を食べきることができない。教室で他の子と食べることができないため保健室で食べるか、食べられないときは家で昼食をとる。 |
| 状況 ・ 結果 | ◆来院理由・患者さんの状況 母親と本人(小学生)の二人で遠方から来院。朝から昼にかけて腹痛が多く、痛みに波がある。ときには胃が押されるような感覚もあるが、夜には症状が出ない。これまでほとんど学校を休むことはなかったが、腹部の症状が続き、最近は学校を休みがちになっている。 ◆1回目 施術の前の問診では丁寧にカウンセリングを行い、身体症状の原因を探ることを心がけた。その結果、家庭の事情で母親が忙しく、本人が寂しい思いを何年も我慢しながら頑張っていたことが分かった。本人は母親を支えるため、寂しさを表に出さなかったが、その頑張りが身体症状として現れている可能性が高いと判断した。カウンセリング中にはお母さまが涙ぐむ場面もあったが、最後は全員がすっきりした状態で終えることができ、小児用の鍼施術に進んだ。 ◆2回目(初診から1週間後) 前回の施術後、。学校を休むこともほどんどなくなり、自宅では食欲が出てきて嘔吐や吐き気が激減した。学校ではまだ保健室での食事が続いているものの、以前より元気になっているとのこと。前回同様、小児鍼と皮膚をやさしくさする施術を行い終了。 ◆3回目(初診から2週間後) 日常生活では以前のように明るく元気に過ごせるようになり、食事もとれるようになって不安がなくなった。学校でも元気に過ごせているようだが、保健室で食事をとる習慣がすぐに変わることは難しく、前回からの大きな変化は見られない。ただし給食はほとんど食べられるようになった。表情も明るく元気な様子だったため、遠方からの来院ということもあり、次回以降は来られるタイミングで来院してもらう方針とした。 ◆3回目以降(前回から1カ月後〜2カ月) その後も明るく過ごしている。母親に時間ができた際に来院され、元気な姿を見せてくれる。子どもが鍼を受けたがることもあり、不定期での来院となっている。 |



小学生に限らず、高校生や大学生であっても、親御さんと一緒に来院しカウンセリングを受けることをおすすめします。体調不良の背景には、メンタル面の影響が関与しているケースが多く見られます。自己肯定感が低下している場合もあり、まずは本人が親(他者)から大切にされていると実感することで、「自分は大切にされてよい存在だ」という安心感が生まれ、改善へ向かう基盤がつくられます。
近年注目されているポリヴェーガル理論においても、安心できる人や場所(安全基地)を感じられることが、自律神経が安定し、心身の回復が始まる重要な要素であるとされています。安全で安心できる環境に身を置くことができると、身体は防御反応を緩め、消化や回復に関わる迷走神経が適切に働きはじめます。そのため、カウンセリングの場において、親御さんと共に安心感を共有することが、改善への重要な第一歩になると考えています。
