「休む=寝る」だけじゃない!横になることの意外な効果

横になることの大切さ ~体の回復メカニズム~

疲れた時って横になりたくなりますよね。イスに座ったまま寝てしまう人もいますが、今回は睡眠ではなく「横になること」にフォーカスして考えてみます。疲れたときに横になりたくなるのは、簡単に言えば「横になると身体への負担が減る」からです。その理由を4つ挙げてみます。

1. 心臓への負担が軽減される

普段意識することはありませんが、立っているときは重力に逆らって血液を全身に循環させる必要があり、心臓の負担が大きくなります。横になると血液がスムーズに巡るため、心拍数が下がり、心臓への負担が軽減されます。

2. 筋肉の緊張が和らぐ

これも日常的に行っていることなので意識することはありませんが、立っているときは姿勢を維持するために常に筋肉が働いています。座っていても、ある程度の筋緊張が必要です。しかし、横になると筋肉の緊張が大きく緩和され、疲労回復を助けます。

3. 神経系の活動が落ち着く

姿勢を維持するために、私たちの神経系は常に情報を処理し続けています。三半規管、筋肉、関節、視覚などからの情報を小脳が統合し、適切な姿勢を維持するよう指令を出しています。しかし、横になるとこれらの情報入力が減少し、神経系の活動が緩やかになります。また、また立ったり座ったりと姿勢を変える動作は、全身の血流を一定に保つようにその都度、自律神経が血圧を調整しています。横になることでこれら神経系の負担が大幅に減り、全身がリラックスしやすくなります。

4. 免疫力を高めるリンパの流れが促進される

リンパ液には、毛細血管から染み出した水分、細胞の代謝物、老廃物などが含まれており、リンパ節で免疫のチェックを受けます。しかし、リンパは心臓のようなポンプ機能を持たず、筋肉の動きによって流れるため、日常生活では滞りやすいものです。

横になることで体の圧力が均等に分散され、リンパの流れが促進されやすくなります。特に夜、横になって休むことは、日中に滞ったリンパの流れを改善し、老廃物の排出を助ける重要な時間です。リンパの流れが良くなることで、免疫細胞が効率よく働き、体がウイルスや細菌と戦いやすくなります。疲れて横になりたくなるときは、すでにリンパの流れが滞り、免疫力が低下しているサインかもしれません。

「未病」を防ぐために

東洋医学では、病気になる前の状態を「未病」と呼びます。なんとなく体がだるい、疲れが取れにくい、風邪をひきやすい——これらは未病のサインかもしれません。横になることは、心臓や筋肉、神経の負担を減らすだけでなく、リンパの流れを改善し、免疫機能を整えることで未病の予防にもつながります。

眠れない夜も「横になるだけで休める」

不眠で悩む方には、「眠れないなら無理に寝ようとせず、眠くなってからベッドに入る」というアドバイスを聞くことがあるかもしれません。これは間違いではありませんが、「眠れていない=体が休まっていない」わけではありません。

実は、横になっているだけでも、心臓や筋肉、神経の負担が軽減され、体は確実に休息を取っています。だからこそ、「眠れない」と焦るのではなく、「横になっているだけでも体は休まる」と思って、安心して過ごしてください。そうすることで、心の緊張が和らぎ、自然と眠りにつきやすくなることもあります。

疲れを感じたとき、無理に頑張り続けず、横になって体をリセットする時間を意識してみてください。それが、健康を保つための第一歩になるかもしれません。

大橋 俊夫(2021)リンパのふしぎ ―未病の仕組みを解き明かす (ちくま新書)[Amazonにリンク]

リンパ液:血管から染み出した血漿けっしょうやタンパク質の成分などが、毛細リンパ管に再吸収されたものです。老廃物の回収などの働きがあります。

がん情報サービス(ganjoho.jp):用語集「リンパ

リンパ節:体全体にある免疫器官の1つで、全身の組織から集まったリンパ液が流れるリンパ管の途中にあります。細菌、ウイルス、がん細胞などがないかをチェックし、免疫機能を発動する「関所」のような役割を持ちます。リンパがれて大きくなる原因として、感染症、免疫・アレルギー性疾患、血液のがん、がんの転移などがあげられます。

がん情報サービスganjoho.jp):用語集「リンパ節」

未病とは、「発病には至らないものの健康な状態から離れつつある状態」を指しています。自覚症状はなくても検査で異常がみられる場合と、自覚症状があっても検査では異常がない場合に大別されます。
病気ではないけれど健康でもない状態、つまり、「だるい」「疲れやすい」「冷える」といった不調も未病といえるので、「そういえば自分も思い当たる」という人は、少なくないと思われます。

協会けんぽ
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